暮らしを訪ねて
やわらかな光のピアノスタジオ
「片方のピアノは、妻が音大に通っていた頃に借りていた部屋にあったもので、愛着が湧いて連れ帰ったものなんです」
グランドピアノ2台が仲良く並ぶ10畳の防音室は、ピアノ講師をされている奥様のレッスンスタジオ。外部との間に大きなガラス窓と明るい廊下を配した、防音性と明るさの両方を兼ね備えた設計で、そよそよと庭の木が風になびく様子が見える、スタジオらしからぬ明るい空間。このスタジオに似合うよう、建具屋で誂えた木の防音扉も付けました。
「素人目線の要望や質問にもアドバイスをしていただき、ほとんど最初に提案していただいた設計通りにすすみました」
N様が家を建てるにあたり、ピアノスタジオを作ることに加え、もう一つ譲れない条件がありました。それは、「おじいちゃんのケヤキ」を使うこと、さらにそれを使いこなせるだけの技術と知識を持っていること。奥様のお爺様が林業を営んでいたことから、どうしても使いたかったといいます。硬質で美しいケヤキですが、完全に乾燥するまでに年月がかかるだけでなく、あばれや狂いも大きいため、扱いが難しい木。大切な思いが詰まったこの木をできる限り無駄にしないよう、最大限活用しました。こうして床に貼られたケヤキは、冬には乾燥で板同士の隙間が開き、夏には閉じてを繰り返しながら、日々呼吸をしています。
「木の家を検討し始めてから、さまざまな所を見学しましたが、最初から茶色く塗って完成時にピークを持ってくるのではなく、年月を経て色が変わる良さや味わいがあるほうが好みでしたし、和のようで北欧のようでもある、この少しモダンな雰囲気が気に入っています」というN様。ご夫婦揃って音楽好きなお二人の、音楽が似合う木のぬくもりのある家。リビングではジャズのアナログレコードが控えめに流れ、時折吹く静かな風を感じる、大人の落ち着いた時間が流れていました。
- 矢板市 N様邸
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- 設計/海老原綾(有限会社都研/海老原綾建築設計スタジオ)
- 延床面積/41.82坪(1階) 28.30坪、(2階) 13.52坪
- 家族構成/夫婦
- 施工期間/2016年11月〜2017年4月
- 木材/県産材・国産材
- 面材/モイス
- 基礎/ベタ基礎
- 基礎断熱/スタイロフォーム
- 屋根/ガルバリウム鋼鈑
- 外壁仕上/塗り壁
- 壁断熱材/羊毛
- 床材/ケヤキ・カバ桜無垢材 (1階)、杉無垢材 (2階)
- 内壁仕上/珪藻土塗り
- 天井/杉化粧板 (1階)、小屋表し+杉化粧板 (2階)
- 木部塗装/自然塗料 (プラネットカラー)