株式会社 家守

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住まいの守り札|棟札

古いお寺や古民家を訪れると、「この建物は明治30年に建てられました」といった説明を目にすることがあります。
その建築年代を知る手がかりのひとつが、「棟札」です。

棟札は、新築や改修の際に家の繁栄や工事の無事を祈り、棟木や梁などの小屋裏に納める細長い木の札です。上棟の日付や施主、棟梁の名、祈りの言葉が墨で記されます。
この風習は平安時代後期に始まり、当初は棟木に直接書きつけていたものが、やがて札として納められるようになったといわれています。歴史ある建物の屋根裏から見つかる棟札には、百年近く前の上棟の日付や人々の名前が残され、その家が歩んできた時間を静かに物語っています。

棟札は、単なる記録ではなく、その家の無事と家族の幸せを祈る「守り札」です。 工事が進むと天井裏に隠れてしまいますが、長い年月を経てもそこにあり続け、家の一番高いところでひっそりと見守り続けています。

家づくりは、ただ住まいを形づくるだけではなく、そこに流れる時間や想いを未来へつなぐこと。 棟札は、家族の暮らしの記憶をそっと残してくれるものです。
そう思うと、家の中で過ごす時間がいつもよりちょっと温かく感じられますね。